認知症の方のグループホームでの仕事を通じて、かすかな記憶を発見
認知症でも家族との記憶は残したいもの
私は以前、認知症の方が共に生活するグループホームで働いていました。認知症と言っても、その程度や進み具合は人それぞれで、グループホームでもいろいろな方がいたのです。
ご家族の関わり方も本当に人それぞれです。よく顔を見に来られ、来るたびに友達を連れてきて談笑を楽しんでいる方もいます。その一方でさまざまな理由から度々来ることができない、もしくは、あまり積極的に関わろうとされない方もいました。
ですが、どんなに認知症が進んで、たとえ家族の顔や名前を忘れてしまっていたとしても、ご家族が来ると、どこかいつもと違った表情を浮かべられているのです。それは、嬉しそうな表情だったり、久しぶりに会って少し緊張した表情だったり、人それぞれです。
確かに、認知症の症状が進むと、家族のことを忘れられる方もいます。それでも話していると、時々ふと思い出されることもあるのです。それは本当に唐突で、音楽を聴いているときや、ゲームを楽しんでいるときだったりします。
昔の記憶を取り戻した元教師
ある男性の話なのですが、昔自分が教師であったということを忘れている方がいました。あるグループホームの企画で、子供たちが餅つきをしにきたときのことです。いつもとは違う楽し気な雰囲気と子供たちの笑い声に、とても陽気な雰囲気でした。
そこへふとその男性が、「ちゃんと大人が子供たちのこと見取らんと、危ないよ!ほら、あの子、ちゃんと見てあげんと!」と、まるで教師時代を彷彿とさせるような言葉を発せられたのです。
普段とはまったく違う、本当に昔の教師時代に戻っているかのような表情をされていました。私もその時は昔の記憶がよみがえった姿を見て、なんとも言えない感情になってしまいました。
認知症になったら家族への支援を求めよう
認知症の方の介護と一言で言っても、本当に大変なことです。どんどんなくなっていく記憶、忘れられる悲しさ、昔できていたことが出来なくなっていく悲しさ、そういったものすべてを、周りにいる人たちは受け止めていかなければなりません。
家族にとって、それらを簡単に受け止めることは並大抵のことではありません。周りのサポートは必ず必要です。
認知症の方にとっても、家族のイライラしたり、困った顔を見るのは辛いことです。認知症になり、どんなに記憶が薄れていっても、家族を忘れてしまったとしても、心のどこかに、きっとずっと残っている何かがあると、そう感じます。
もし認知症の方が近くにいたら、周りの方、家族で助け合い、支えていける環境を模索していくことが大切だと考えています。
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