認知症や物忘れと向き合って予防するために家族と共に考えたこと
料理を忘れてあわや火事で祖母の異変を感じ
私には80歳になる祖母がいて、一軒家に一人暮らしをしています。普段は車で1時間くらいの離れたところに住んでいるので、年末年始やお盆の時くらいしか顔を合わせることはなかったのですが、ある時家を訪れると、なんだか焦げ臭い臭いがしましたまさか、と思い急いで台所に向かうと、なにも入っていない鍋が真っ黒に焦げていたのです。
慌てて火を止めて事なきを得ましたが、あやうく火事になるところでした。
「おばあちゃん、鍋火つけっぱなしだったよ!!」
「おばあちゃんは今日料理作ってないよ。」
祖母のその言葉を聞いて、血の気が引いた気がしたのを覚えています。
祖母は火をかけたことはもとより、台所にいったことさえすでに覚えてはいなかったのです。身内の人間がある時を境に認知症になるというのはこういうことなのでしょう。それでも、台所の焦げ臭い臭いはなかなか取れずとも、その後特に何事もなく時過ぎていきました。
不眠症の薬も置きっぱなしに
ただ、この一件以来、私の両親と私で頻繁に祖母の家に通うようになりました。
確かに一日の様子を見ていると、あれ?と思うことがたびたびありました。祖母は不眠症で病院から薬をもらっていました。その薬が戸棚の中から大量の薬に出てきたのです。どうやら、薬をもらってきたのにも関わらず、テーブルの容器に入れた薬以外はすべて戸棚に入れそれを忘れてしまったようでした。
また、軽度のものは誰にでもありがちかもしれませんが、何度も何度も同じ話をします。それが一日中続くのです。ここまで様子がおかしくなっていたことに気づいてからは、認知症の進行を少しでも遅らせるためにさまざまな方法を試してみることにしたのです。
予防の初めの一歩は散歩から
まずは、とにかく一日中、家の中にいることはやめるようにしました。祖母は必要最低限の買い物以外は外出せず、家の中に引きこもっていたようなのです。両親と私はまず散歩に連れ出すことにしました。
最初はとにかく億劫になって玄関まで行くのも嫌がりました。必要がないのに外出することへの抵抗感と、散歩に半ば強引とも思えるように連れて行くように見える私たちへの不信感だったのでしょう。本当に外に行くのがこんなに大変なこととは知りませんでした。
それでも季節が少し暖かくなってきて、春の陽気が漂うになると、心なしか、祖母の態度も柔らかくなったよう気がしました。散歩といっても、家の周りを10分程度一緒に歩くだけなんです。季節の花が咲いていたり、銀杏の葉が緑になったりして、自然の移ろいを感じながら歩きました。
昔のことの思い出を語って脳を活性化
思い出話もしました。堀があってそこを流れていた水が奇麗だった話とか、昔祖母が長屋に住んでいた話とか。最近のことは忘れっぽくなっても、昔のことは覚えているものなんですね。
昔のことを話をしている祖母は本当に目を輝かせて話していました。新鮮な空気を吸ったことと、大切な思い出を話すことによって顔つきがだいぶ良い方に変わったように思います。
専門的なことはよくわかりませんが、どうやら昔のことを思い出したり話したりすると、脳の血流が増加して認知症の進行を遅らせてくれるようです。そのように脳が活性化すると情緒を安定させてくれる効果があるそうです。
だから祖母は前のように優しい顔になったんですね。家の中ばかりいるのは良くないと思ってしたことが、良い効果を生んでいることに嬉しくなりました。
食べ物を改善することで食事の大切さを実感
次に試したことは食事の改善です。祖母の食事は本当に粗食です。ごはん、お漬物、納豆、少しの生野菜、お味噌汁です。私が毎日この食事内容ならダイエットになっていいかもしれませんが、完全にタンパク質が足りていません。タンパク質が足りないから、筋肉が細くなってしまうし、筋肉が細くなるから、外に出歩くのもしんどくなってしまうのでした。
まずは、毎食100グラム程度のお肉を食べてもらうようにしました。もともと好き嫌いが多く、特に魚はあまり好きではなかった祖母のメインはお肉にしました。毎日私たちが行くことはできないので、お肉を調理したものを冷凍して、食べるとき解凍してもらうことにしました。
また、野菜ですが、生野菜だと量を食べることができないので、野菜をゆでたものを冷凍して、食べるときにはお味噌汁の中に凍ったものを入れて一緒に煮込んでもらうようにしました。
この方法だと、一日に350グラムは野菜を摂れるようになります。この方法が、認知症に良いかどうかというのはよく分かりませんが、体に良いことは間違いないでしょう。
予防した後祖母は元気な姿を見せた
離れて暮らしているので、なかなか一日付きっ切りというわけにはいきませんでしたが、2つの方法をメインに行ったところ、祖母に変化が起きました。
まず、動き方がテキパキとなったこと、そして、話し方がしっかりとしたことです。いつでも億劫そうに動いていて、体を動かすことがしんどそうだった祖母ですが、昔のように、お茶菓子を出しに立ち上がったりお湯が沸いたようだとパッと台所に行くようになりました。
話し方については、これまで、活舌が悪いような、おなかから声が出ていないようなどんよりとして雰囲気だったのですが、笑顔を見せて話してくれるようになりました。時々会うだけだった時よりもずっと元気になったのでが、両親も私もとても嬉しく思いました。
祖母の物忘れを予防するため今後の家族の在り方
私たちが試した方法は、本当に軽度の症状を遅らせるための方法で、合う合わないは、その方や家族の生活の有り様によって違いがあります。たまたま、私たちは違和感やちょっとしたことをきっかけに発見できて予防策をとれて幸運だったと感じます。
しかしお互いに生活があるので、やすやすと一緒に生活するとか誰かが面倒を見るとも言えない状況は現実にあります。とはいえ、今後も注意深く祖母の様子を見ていかなくてはいけないですし、これからますます認知力と体力を維持し続けるために対策を家族で取っていかなくてはいけないことになります。
それでも、本人の意思として、まだ普通の生活がしたいというなら、私たちの精神力と体力が許すところまではどうにかしてあげたいと考えています。
今まで親しくしていたおばあさんが物忘れが増えて問題が起きるようになるのは、家族にとってはつらいところよね。うちのお母さんも両親がいつかはそうなるのかもしれないと悩んでいたわ。そうなることを防ぐためにも食事や運動、脳トレなどの予防策はできだけ早いうちにやったほうがいいと、しみじみ感じたわ。
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