認知症介護の仕事を始めた頃の記憶障害に関わる体験談
認知症介護の仕事を始めて衝撃的な体験とは？
僕が認知症介護の仕事を始めたのは、今から７年前でした。グループホームという認知症対応型共同生活介護事業所で働き始めて、今年で７年になります。今回はそんな認知症介護の仕事を始めた頃の衝撃的な体験を紹介します。
記憶障害で５秒で食事をしたことを忘れてしまう
今、思いつく体験は、結構一般の方でもご存知の、ご飯食べた後に「ご飯まだかい？」という志村けんさんのコントに出てくるようなおばあさんパターンですね。「飯はまだかい？」という、ひとみ婆さんです。
僕の体験としては、ご飯を食べ終わった５秒で忘れて怒り出すということが最も衝撃的です。具体的にどういうことかと申しますと、例えば昼ご飯をグループホームの茶の間で基本皆さんで食べるときの話です。
認知症のある８０代女性のおばあさんが、自分で食べたご飯茶碗を手に持ちながら「誰！私のご飯食べたの！」と怒鳴り散らすのです。本人が５秒前に食べ終わって、食べかすを口のまわりにつけている状態で忘れている。そして状況が認識できない、いわゆる見当識障害というものです。
これを初めて見た時は、わざと言っているのではないだろうか？と考えたものです。だって、今手に茶碗持っているし、米粒口についているわ、どうやって逆に取るの？どういうお笑い？という風に感じました。
記憶障害に対しては自分も認知症になりきってみる
当時介護初心者の僕は、どうすれば良いのかわからず、ただただ、呆然とするだけでした。
その入居者さんが隣の入居者さんに「あんたが盗ったんでしょ！」と怒鳴るまで何もできませんでした。認知症が進行するとこういうことも起こるんです。
今の僕は、まず、その認知症の方になりきり、その人と同じ言動をして、その方の世界に入り込みます。この認知症の方に皆さんもなりきってほしいと考えています。
今までの長い人生経験があり、目の前のご飯を食べて、忘れるということありえますか？
普通ないですよね？僕が今、仮に若年性認知症で、目の前のご飯を食べようとしてなくなってしまったら、自分が認知症だから忘れてしまったのかもしれない、と思えるか心配です。
もしかしたら、自分が忘れるわけないから、誰かに食べ物を盗まれたのかもしれない、空のご飯茶碗だけ渡されたのかもしれない、等々考えてしまうかもしれません。
認知症の記憶障害と話を合わせて対応してみる
じゃあ、こういう場合どうすればよいのでしょうか？結論は人によります。
この入居者さんの場合は、認知症がかなり進んでいたので、逆にすぐ対応すれば、「ご飯食べていない」という訴え自体忘れてしまうのです。ですから、はやめに「ごめんねー」といいながら、時には飲み物をいっしょに飲みながら、本人の好きな話題を振り笑ってもらって、マイナスをプラスに変えることも可能でした。
この認知症高齢者の方は根がやさしい方だったのでした。訴える前に「僕お腹すいててご飯たべてしまいました、ごめんなさい」とこちらから先に仕掛けて謝れば、「いいのよ」と許してくれました。ときには「これもよかったらどうぞ」と他のおかずをくれたりもしました。
そんな一体験でした。
認知症を発症させているときによくあることと言えば、記憶障害や見当識障害の影響で食事を終わったばかりなのに「食事はまだか？」と、脳が今食事をしたことを覚えられないことよね。
介護をしている家族が「今食べたばかりでしょ？」と言い返しても、食べた食べないの押し問答になってしまい、それがきっかけで介護トラブルへとつながってしまう。
記憶障害などで食事をしていないと言ったことを否定するのではなく、逆に認知症の高齢者に話を合わせるよう肯定して対応できれば、コミュニケーションもうまくいくかもしれないってことね。
もちろん同じことが何度も続くと介護者がイライラして介護ストレスになりかねないから、さじ加減がポイントとなるけど。
スポンサーリンク
