認知症の高齢者に泣かされた介護のあの頃の思い出
認知症の母親と娘との複雑な関係とは?
認知症の高齢者に泣かされた介護の体験があります。
その方は認知症でほとんど言葉が出ず、同じ単語を繰返し言っていました。もともと水商売をしていて離婚経験があり、その離婚をきっかけに子供と一切連絡取らなくなった生活保護の方でした。
その方が認知症になると、子供は一人だけだったのですが離婚以来一度も連絡取っていなかったその子供に役所から連絡がいきました。
複雑な気持ちはあるものの、うちの施設に入居されてキーパーソン(家族の中で一番重要な方みたいな感じ)になってくれました。
認知症の進行で娘が10歳になってしまう?
そのお子さん(50代女性)は、うちの施設から車で5時間くらいかかる所に住んでいたのですが、年に1回顔を出しに来てくれました。
彼女の母親の認知症はかなり進行していて、自分の子供のことがわからないほどでした。
娘さんが来て娘さんが自分の名前を言っても、その方は自分の名前を言い返すくらいでした。
ただ、たまに娘さんの名前を言ったりしてましたが、その方にとって娘さんの年は10歳くらいの間隔で話していました。その当時の娘さんの年は50代なので、ただただ混乱するだけでした。
認知症の高齢者に誘われていっしょに布団に入ってみた
その方は男性職員が好きで、夜勤で居室の誘導すると必ず「あんたもいっしょに寝なさい」と言いました。僕はなんかしっくりこないなぁと感じながらも、当たり障りのないことを言って、他の方や事務仕事なんかしてました。
それでも僕はなんか気になることはやりたいたちでした。その当時の責任者の夜勤の日に許可をいただき、「本当に布団にいっしょに寝たらどうなるのだろう?」と考えて、いっしょの布団に入ってみました。
その方が寝て2時間くらい経った後です。目を覚ましたとき「あんた誰?やだねぇ、私の布団に入ってきて」と言って、ソッポむかれてしまいました。
やっぱり認知症だからとは言え、そんなもんだよな~と考えてました。
認知症でも互いにつながりあって感謝してくれる
それから、数ヶ月経ったある日の夜勤のときの話です。その方が居室から出て来た所へいつも通りトイレの誘導をしました。その時、急にまともになっているというか、回路がたまたまつながったというか、急に単語だけでなく普通に話しかけられたのです。
「いつもありがとうね。私、頭おかしくなってしまったから、うまく言えないけど、本当に感謝してるの。
○○(娘さんの名前)が来てくれているのは、わかっているの。いろいろ迷惑かけて、謝ろうという気持ちはあるんだけど、実際に顔見ると恥ずかしくて言えないんだわ。
本当は謝りたくて、そして感謝したいんだ。あんたもこんなおかしい私に笑って付き合ってくれて、本当にありがとうね。」
僕は涙が止まりませんでした。「なに泣いているの~」とおっしゃりながら、その方も泣いていました。回路がつながったのはその夜勤の日一度きりです。その一度の思い出が、僕を今でも認知症介護に踏みとどまらせているのかもしれません。
認知症を発症させていて誰だかわからない状態になってしまっても、お互いにつながりあう瞬間はあるものなのね。
その上認知症でも感謝の言葉まで言われたら、なかなか言われないことだからうれしさはかなり大きなものだわ。
問題は認知症が進行していくと、このようなつながりの機会がさらに少なくなってしまうことだけど。
例え認知症の進行で自分のことを全て忘れてしまっても、一瞬でもいいからつながりが戻ってくることを信じたいものね。
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